メッセージとメディアの選択(Promotion/マーケティングの4P)

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プロモーションは、製品・サービスを関わる情報を多数の人々に向けて発信する活動です。しかし、開発された製品を漫然と発信していても、人々がそれを必要と認識することには必ずしもつながりません。優れたプロモーションを展開するには、活動の戦略的なデザインが必要になります。

「何を」「どのように」伝えるのか、この重要な2つをキーワードをもとに、4PのうちのPromotion(プロモーション)を今回は考えます。

Ⅰ.メッセージの選択

例えば、コカ・コーラという1つの製品についても、製品を捉える視点を切り替えることで、さまざまなメッセージを見つけることが出来る。

コカ・コーラが誕生したのは1886年のことです、今では世界中から親しまれるこの飲料について、コカ・コーラ社は様々なメッセージを発信してきました。

「おいしく、さわやか」(1886)
「すばらしいコカの葉と、有名なコラの実の成分が入っている」(1886)
「心身の疲れをいやし、頭痛を直す」(1899)
「試合の合間にコカ・コーラを飲むといつも生き返る」(1905)
「さわやかな憩いのひととき」(1907)
「ほとんどみんな最高のものが好き」(1955)
「コークを飲むともっといい」(1963)
「フレンドリー・フィーリング、世界は一つ」(1971)
「Cokeのきいた人生を」(2007)

新しい製品・サービスを市場に導入する際には、一般的にその特性や効用を訴求することが欠かせません。潜在的な顧客は、その製品に対して認知の浅い状態ですから当然です。

コカ・コーラも初期は、「おいしく、さわやか」「すばらしいコカの葉と、有名なコラの実の成分が入っている」「心身の疲れをいやし、頭痛を直す」のように、飲料の特性や効用を語っています。

やがて、ビン詰の技術が確立され、場所を選ばずに飲めるようになると、「試合の合間」「ショッピング」「憩いのひととき」のように使用シーンを訴求するものへと変わります。マーケティング・ミックスの構成要素であるパッケージや流通の変化と連動したメッセージといえます。

その後はライバルであるペプシコーラに対抗するように、王座の貫禄ともいえるような「最高のもの」「もっといい」というメッセージが展開されます。

それに続く「世界はひとつ」「Cokeのきいた人生」などのメッセージは、ライバルどころか世界中のひとをコカ・コーラの世界観に取り込もうとするような広い理念を表しているように感じます。

このようにプロモーションのメッセージは、マーケティング・ミックスを踏まえ、その時々の戦略から導かれるものなのです。

プロモーションのメッセージを導き出す主要な視点には次のようなものがあります。

出展:石井他(2013)「ゼミナールマーケティング入門 第2版」日経BP 日本経済新聞出版, P103

Ⅱ.メディアの選択

次に、策定したメッセージをどのように人々に伝えていくかを考える必要があります。

製品・サービスに関わる情報を人々に伝えていく際の中心的な手段は、「広告活動」「PR活動」「人的販売」「セールス・プロモーション」の4つのメディアです。この4つのメディアを「プロモーション・ミックス」といいます。

❶広告活動

多くの人々が視聴するメディアや多くの人々が行き交う場所に時間やスペースを確保し自社の製品・サービスを訴求します。広告スペースとしてはテレビ、新聞、雑誌、インターネット、イベント会場などがあります。

❷PR活動

製品・サービスの販売に先駆けて行われる報道機関を対象とした展示会・発表会などの情報提供活動や、社会貢献活動を通じて企業のイメージ向上を図る活動です。PR活動は、広告とは異なり、間接的にメディアを利用しようとするもので、結果としてメディアに紹介されることを狙ったものであると考えられます。

❸人的販売

人を介し、顧客との直接的な会話を通じて製品・サービスの情報を提示する活動です。営業担当者や販売員が該当します。BtoBが中心の商材は、営業担当者による製品・サービスの説明による人的販売がプロモーションの中心になります。

❹セールス・プロモーション

広告活動、PR活動、人的販売に属さない活動の総称です。セールス・プロモーションには、広告やPRと異なり、製品・サービスを直接見たり、触ったり、使用したりする経験を潜在顧客に与えることで、知名度や理解度を高めようとする活動が多く含まれます。イメージしやすいプロモーションの例としいては、試食やサンプリングが該当します。

以上が、企業が製品・サービスの情報を企業が人々に伝達するための中心的な手段です。

ちなみに、プロモーション・ミックスの上位概念として、マーケティングミックス全体をコミュニケーションと捉え、その一貫性をマネジメントする「統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)」という考え方があります。

IMCは、4Pを含む、顧客とのタッチポイントにおけるさまざまなマーケティング戦略を、統一したコンセプトにもとづいて実施する手法です。

Ⅲ.プロモーションの効果測定

プロモーションの効果はどのように図ればよいのでしょうか。

プロモーションの効果を図る指標の例としては以下のようなものが挙げられます。

・到達率(視聴率、発行部数)
・プロモーションに対する認知率、好感度
・ブランドの認知度
・ブランド連想
・製品・サービスの認知度
・製品・サービスに対する興味・関心・理解度・購買意向
・購買後の満足度、ロイヤルティ
・製品・サービスの収益性

しかし、例えば売上の増大という同じ目標を達成しようとしても、何をするべきかはその時々によって異なります。

例えば、A「自社製品の認知度が高く、購買意欲もそこそこ高いが、購買率が低い」状況と、B「認知度は低いが購買率が高い」状況では、プロモーションによって達成すべき目標も変わってくるでしょう。

A:自社製品の認知度が高く、購買意欲もそこそこ高いが、購買率が低い

B:認知度は低いが購買率が高い                   

Aの場合は、「買いたい人は多いけど買える場所がわからない」「買いたいけれど価格が高い」などの問題が想定されます。問題は認知度では無いわけですから、いくら広告に力を入れたところで購買率は一向に高まらないでしょう。

Bの場合は、「知っている人は買う」状況ですから、認知度を高める方向にもっていけば売上の向上が見込めるかもしれません。

このように、プロモーションにおいて重視すべき測定指標は、どのような状況で、どのような効果を求めているかによって変わりますから、効果の良し悪しを評価する唯一の指標は存在しません。

個々の製品・サービスの置かれた課題と目標に沿って、プロモーションの目標、そしてその効果も計測する必要があります。

参考

石井他(2013)「ゼミナールマーケティング入門 第2版」日経BP 日本経済新聞出版


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